AI・LLMO特集 / トレンド深掘り
2025年後半から、AIの進化は「画面(UI)」そのものを生成する段階に入りました。そして2026年、その動きは検索や制作ツールの中で一気に現実味を帯びています。キーワードは Generative UI(生成UI)——AIが、その場で画面そのものを作り出す技術です。これは単なる新機能ではありません。「ものを作る」と「情報を探す」という、ビジネスの両輪が同時に作り替えられようとしています。今回は、この地殻変動を2つの方向から深掘りします。
はじめに:Generative UIとは何か
Generative UIをひとことで言えば、「あらかじめ用意された固定の画面」ではなく、その時その人の目的に合わせて、AIがその場で組み立てる画面のことです。
従来のWeb・アプリは、デザイナーやエンジニアが事前に作り込んだ画面を、すべての利用者に同じように見せていました。Generative UIの世界では、ボタンや表、グラフ、操作できるシミュレーションといった部品を、AIが問いに応じてその都度組み上げます。固定の「完成品」を用意して待つのではなく、画面が対話の中で生まれる——そういう発想の転換です。
(生成UIの基礎については、コラム「生成UIは検索をどう変えるか」でもやさしく解説しています。本稿は、その先の「最新動向と実務インパクト」に踏み込みます。)
この技術は、いま2つの方向に同時に効きはじめています。ひとつは作り手の側の変化、もうひとつは探し手の側の変化です。順に見ていきましょう。
地殻変動①:制作の「民主化」——意図さえあれば、動くものが作れる
ひとつ目の方向は、「作ること」のハードルが劇的に下がったことです。
これまで、頭の中にあるアイデアを「動く形」にするには、デザイナーやエンジニアといった専門家の力が欠かせませんでした。企画書を書き、ワイヤーフレーム(設計図)を引き、デザインを作り、実装を依頼する——アイデアが形になるまでに、何人もの手と、何週間もの時間がかかっていたのです。
その前提が、崩れはじめています。2025年以降、プロンプト(言葉での指示)から操作できるUIプロトタイプ(動く試作品)を生成するツールが相次いで登場し、2026年には実務利用の選択肢として現実味を増しています。
- Figma Make:デザインツールFigmaに組み込まれた機能で、文章で指示するだけで、クリックして動かせるUIや機能プロトタイプをその場で生成します(2025年に一般提供開始)
- Google Stitch:Google LabsのAIデザインツール。作りたいUIを普通の言葉で説明すると、Web・モバイル向けのデザイン案やプロトタイプ、フロントエンドコードのたたき台までを生成できます。ワイヤーフレームやデザインスキルがなくても着手できる、と案内されています
Google I/O 2026の実演も象徴的でした。新しいAI「Gemini 3.5 Flash」と開発プラットフォーム「Antigravity」を組み合わせ、複数のAIエージェントを並行して動かすことで、開発やプロトタイピングの初速を大きく高める方向性が示されたのです。
大事なのは「意図の明確化」
ここで強調したいのは、この変化の本質は「ツールが賢くなった」ことではない、という点です。
本当に変わったのは、人間に求められる役割です。専門スキルがボトルネックだった時代には、「何を作るか」よりも「どう作るか」に多くの労力が割かれていました。Generative UIの時代には、その「どう作るか」をAIが引き受けます。残るのは——そして決定的に重要になるのは——「何を、なぜ作るのか」という意図そのものです。
意図が曖昧なまま指示を出せば、もっともらしいけれど的外れな試作品が、高速で大量に出てくるだけです。逆に、「誰のどんな課題を、どう解決したいのか」がはっきりしていれば、その意図を入力するだけで、議論のたたき台になる完成形の動く模型が一気に手に入ります。
つまり、企画段階で「まず動くものを見ながら考える」ことが、誰にでもできるようになりました。これは、企画・マーケティング・現場の担当者にとって、見過ごせない武器です。
作る力が一部の専門家から解放されたとき、価値の源泉は「作れること」から「何を作るべきかを見極められること」へ移ります。
地殻変動②:Webサイトの役割が変わる——「探す場所」から「確かめる場所」へ
ふたつ目の方向は、情報を「探す」体験そのものの変化です。
Google I/O 2026で示された方向性は明確でした。検索が、「キーワードを入れて、青いリンクの一覧から選ぶ」ものから、「対話しながら、知りたいことをその場で受け取る」ものへと変わっていきます。
しかも、返ってくるのは文章だけではありません。Generative UIによって、質問に応じた比較表・グラフ・計算ツール・操作できるシミュレーションが、検索結果の中にその場で生成されます。Googleの説明によれば、たとえば「銀行口座を比較したい」という問いに対して、複数の口座を月額手数料・海外手数料・アプリ機能などの条件で絞り込めるインタラクティブな比較ツールが、検索画面の中に直接組み上がる、といった具合です。検索内のこうしたGenerative UIは2026年の夏に広く無料提供される一方、ミニアプリのような継続利用できるカスタム体験は、まず上位プラン(米国のGoogle AI Pro/Ultra)から提供されると案内されています。
これが意味するのは、「検討のプロセス」が、各社のWebサイトを回遊することなく、Chat UI(対話画面)の中で完結するということです。ユーザーはもう、10個のサイトを開いて、自分で表を作って比べる必要がありません。AIが、その比較表を作ってくれるのですから。
キーワード順位を競う時代の終わり
この変化は、これまでのWeb集客の常識を根底から揺さぶります。
「検索結果で上位に表示されること」を目指して、キーワードを盛り込み、順位を競う——そうした「順位だけを追うSEO」の考え方は、急速に限界を迎えつつあります。なぜなら、ユーザーが見るのは「順位の付いたリンク一覧」だけでなく、「AIが生成した、答えそのもの」になっていくからです。1位を取っても、その内容がAIの比較表に取り込まれてしまえば、サイトが訪問される機会は減ります。(なお、Google自身は「AI検索向けの特別な最適化は不要で、基本的なSEOの良い実践は引き続き有効」と説明しています。順位対策が無意味になるのではなく、それ「だけ」では届かなくなる、という変化です。)
では、Webサイトは不要になるのでしょうか。私たちは、そうは考えていません。役割が変わるのです。
Webサイトは「最後に確かめる場所」になる
これからのWebサイトは、情報を探しに来る入り口ではなく、意思決定の最終確認をする場所になっていく可能性が高いと考えています。
ユーザーの行動を想像してみてください。AIとの対話で比較検討を進め、「この選択肢が良さそうだ」という結論にたどり着く。けれど、本当に大事な決断の前には、人は「念のため、公式の情報で確かめたい」と思うものです。そのとき、ユーザーは初めて——AIが提示した検討資料の事実確認のために——その企業のWebサイトを訪れます。
つまり、Webサイトは「比較検討の起点」から「最終決定の裏付け」へと、訪問されるタイミングそのものが後ろにずれていきます(GoogleもAI検索の中でリンクや関連情報を提示し続けると説明しており、サイトへの訪問がなくなるわけではありません。重みが移る、ということです)。だとすれば、サイトに求められるものも変わります。回遊させる仕掛けや、検索順位のためのキーワードよりも、「AIが提示した内容と、公式情報が一致していること」「一次情報として信頼できること」が、はるかに重要になります。
Webサイトの勝負どころは「見つけてもらう」から「AIに正しく引用され、最後に信頼して確かめてもらう」へと移っていきます。
2つの地殻変動が指し示す、1つの本質
ここまで「作る側」と「探す側」、2つの変化を見てきました。一見、別々の話に見えますが、根っこは同じです。
どちらも、「意図」を入力すれば、「目的に合った成果物」がその場で生成される——という同じ構造をしています。作り手にとっての成果物は「動くプロトタイプ」であり、探し手にとっての成果物は「比較検討資料」です。固定された完成品(作り込まれた画面、作り込まれたページ)を介さずに、意図から直接、必要なものが立ち上がる。これがGenerative UI時代の共通原理です。
この原理を理解すると、企業が取るべき構えも見えてきます。「立派な完成品(きれいなサイト・凝ったアプリ)を作って待つ」発想から、「AIが正しく組み立てるための、明確な意図と正確な素材を提供する」発想への転換です。
いま備えるべきこと
Generative UIが本格的に普及するのは、これからです。だからこそ、いまは静かに仕込んでおける好機でもあります。
- 「意図を言語化する」訓練を始める:企画やマーケティングの現場で、「何を・誰に・なぜ」を明確に言葉にする力が、そのまま生成AIを使いこなす力になります。まずは身近な企画を、プロンプトでプロトタイプ化してみることをおすすめします
- 自社情報を「人にもAIにも読み取りやすい一次情報」として整える:定義・条件・価格・対象者・更新日を明確に。AIが比較・要約するときも、人が最終確認するときも、正確に伝わる素材を用意しておきます
- 「最終確認の場」としてのサイトを設計する:公式の一次情報・正確な数値・更新日を、誰が見てもすぐ確かめられる形に整えます。派手さより、信頼性と正確さです
- ブランド名でAIに質問し、ズレを点検する:主要なAIに自社や自社商品について尋ね、事実と違う説明や空白がないかを定期的に確認します
これらは、画面の作られ方がどう進化しても、効き続ける備えです。
よくある疑問
Q. プロトタイプが誰でも作れるなら、デザイナーやエンジニアは不要になりますか?
いいえ。むしろ「意図を形にする初速」が上がるぶん、「その先を磨き上げる」専門性の価値は残ります。変わるのは役割分担です。たたき台作りはAIと企画者が担い、専門家はより本質的な設計・品質・体験の作り込みに集中する——という分業へ移っていくと考えられます。
Q. 検索からの流入が減るなら、Webサイトはもう作らなくてよいのでは?
そうは考えていません。役割が「集客の入り口」から「信頼の最終確認」へ移るだけです。むしろ、AIに正しく引用され、最後に信頼して訪れてもらうために、一次情報としての正確さ・透明性の重要度は上がります。
Q. 中小企業や非IT企業にも関係ありますか?
関係します。プロトタイプ作成の民主化は、専門部署を持たない企業ほど恩恵が大きい変化です。また、検索体験の変化は業種を問わず進むため、「自社がAIにどう説明されているか」は、どんな企業にとっても無視できないテーマになります。
まとめ
Generative UIは、「作る」と「探す」という2つの体験を、同時に作り替えています。専門家がいなくても意図から動くものが作れるようになり、検索はWebサイトを回遊せずとも対話の中で完結するようになりつつあります。
共通するのは、「意図を、その場の成果物に変換する」という新しい原理です。だからこそ、これからの企業に問われるのは、立派な完成品を用意する力よりも、明確な意図を持ち、正確な一次情報を、機械が読める形で差し出せるか。器の進化を追いかけるのではなく、器に選ばれる中身を育てる——それが、変化の速いこの領域で陳腐化しない構えだと、私たちは考えています。
参考にした情報源
- Google Research「Generative UI: A rich, custom, visual interactive user experience for any prompt」(2025年11月18日)
- Google「Google Search’s I/O 2026 updates: AI agents and more」(2026年5月19日)
- Google「I/O 2026: Welcome to the agentic Gemini era」(2026年5月19日)
- Google Developers Blog「I/O 2026 developer highlights: Antigravity, Gemini API, AI Studio」
- Figma Help Center「Explore Figma Make」
- Google Developers Blog「From idea to app: Introducing Stitch, a new way to design UIs」/Google Blog「Introducing ‘vibe design’ with Stitch」
- Google 検索セントラル「AI features and your website」(AI検索向けの特別な最適化は不要との説明)
※ 本記事の事実関係は、各社の公式発表・公開情報(2026年6月時点)に基づいています。各機能の提供時期・範囲(無料提供か上位プラン向けか等)は地域や時期により異なり、変更される場合があります。製品名・機能は説明のための代表例であり、特定サービスの推奨を意図するものではありません。
