AI・LLMO実践コラム / 計測編
「検索順位は上がっているのに、問い合わせが減っている」——もしそう感じているなら、それはあなたのサイトが“見られる前に答えられている”サインかもしれません。今回は、流入が減ることを前提に、「何を測るか」を組み直します。
順位を追うほど、現実が見えなくなる
検索しても、結果をクリックせずに終わる「ゼロクリック」が当たり前になりました。
背景にあるのは、検索の画面そのものの変化です。Googleの検索結果は「リンクの一覧」から「AIが要約・回答をその場で組み立てる画面」へと段階的に置き換わっており、ユーザーは答えをその場で受け取って、リンクを押さずに離れていきます。
行動データも、この傾向を裏づけています。Pew Researchの調査では、AI要約(AI Overviews)が表示されたGoogle検索ページで、AI要約内のリンクがクリックされた割合は全訪問のわずか1%。従来の検索結果リンクのクリック率も、AI要約がない場合より低下していました。Seer Interactiveの分析でも、AI Overviewsが表示される検索ではクリック率が大きく下がる一方、AI Overviews内で引用された場合は、引用されない場合よりクリックが多い傾向が示されています。クリックは減るが、引用されることには価値が残る——という構図です。
さらに、まだ査読前の研究段階ではあるものの、2026年のAI Overviews実測調査では、AI Overviewsに引用されたページのうち約3割が、通常の検索結果の1ページ目に表示されていなかったという観察も報告されています。検索順位と「AIの回答内での可視性」は、別物になり始めている可能性が高いのです。
この世界では、検索順位で1位を取っても、その答えがAI要約の中で完結してしまえば、クリックや問い合わせにはつながりにくくなります。順位という指標は、もはや「可視性」を正確に表さなくなりつつあるのです。
だからこそ、測る対象を「順位」から「AIの回答の中に、自社がどれだけ登場しているか」へと移す必要があります。
新しい主要指標:引用シェア(AI Share of Voice)
いま注目されているのが、引用シェア(AI Share of Voice)という考え方です。
計算式はシンプルです。ある分野の問い全体のうち、自社が引用・言及された割合を見ます。
引用シェア = 自社が引用された回数 ÷ その分野でのAI回答における全引用回数 × 100
たとえば「業務用ユニフォーム おすすめ」のような、顧客が実際に使う問いを20個ほど用意します。それぞれを各AIに投げて、自社が何回登場したかを数える。これを定期的に記録すれば、AIの世界での存在感の推移が見えてきます。コンサルティング会社のBainも、クリック中心の指標を見直し、ブランドがどれだけAIの回答に届き、影響を与えているか(AIリーチ・AI影響度)といった指標を加えることを提案しています。
「登場した」だけでは足りない
ここで一段、解像度を上げましょう。
近年のAI検索研究では、引用元として参照リストに載ることと、回答本文の形成に実際に使われることを、分けて捉える見方が出てきています。前者が「選ばれた」段階(citation selection)、後者が「使われた」段階(citation absorption)です。まだ研究段階の考え方ですが、AI回答内での「登場回数」だけでなく「どれだけ回答内容に影響しているか」を見るうえで、参考になる整理です。
脚注に小さく出ているだけなのと、回答の中身を実際に左右しているのとでは、価値がまったく違います。「登場回数」だけでなく「どれだけ回答に影響したか」まで見られると理想的です。
さらに、AIごとに引用の“癖”も異なります。あるエンジンは多くの情報源を浅く引き、別のエンジンは少数の情報源を深く使う、といった違いです。だからこそ、指標はエンジンを混ぜた“平均”ではなく、エンジンごとに分けて見るのが鉄則です。混ぜてしまうと、戦略的な違いが見えなくなります。
測るべき4つの指標
整理すると、見るべき指標はおおむね次の4つです。
- 引用シェア:分野内の問いに対し、自社が登場する割合
- 登場順位:回答の中で何番目に挙げられるか
- プロンプトカバレッジ:顧客が使う問いのうち、自社が登場する問いの数
- 論調:登場したとき、好意的に説明されているか
もちろん、クリック数やコンバージョン率が不要になるわけではありません。ただ、AIが答えで完結させてしまう以上、これら“クリック後”の指標だけを見ていると、意思決定がAIの中で起きている事実を見落とします。まずは「答えが組み立てられる瞬間に、自社がそこにいるか」を測ることが先決です。
よくある疑問
Q. 専用ツールがないと測れませんか?
本格的に測るなら専用ツールが便利ですが、最初は手作業でも始められます。顧客が使う問いを各AIに投げ、登場有無をスプレッドシートに記録するだけでも、現状把握には十分役立ちます。
Q. 順位計測はもうやめるべき?
やめる必要はありません。順位やクリックも引き続き意味を持つ場面はあります。ポイントは、それ「だけ」に頼らず、引用シェアという新しい物差しを“足す”ことです。
Q. どのくらいの頻度で測ればいい?
月次での定点観測がおすすめです。AIの回答は変動するため、一度きりでなく、継続して推移を追うことで施策の効果が見えてきます。
まとめ
ゼロクリックが当たり前になった今、検索順位だけを追っていると、本当の可視性を見失います。「AIの回答に、自社がどれだけ登場し、どれだけ影響しているか」——引用シェアを軸に、エンジンごとに、継続して測る。これが、新しい時代のKPI設計の出発点です。
次回のコラムでは、その「引用される」ために、コンテンツをどんな“形”に整えればよいのかを、具体例とともに解説します。
参考にした情報源
- Pew Research Center(Google AI要約とクリック行動に関する調査、2025年)
- Seer Interactive(AI Overviews出現時のCTR影響分析、2025年)
- Bain & Company「Goodbye Clicks, Hello AI: Zero-Click Search Redefines Marketing」(2025年)
- 「Measuring Google AI Overviews」/「From Citation Selection to Citation Absorption」(いずれもarXiv掲載の査読前論文、2026年)— 研究段階の参考として
- AI Share of Voice 計測フレームワークに関する各種分析(2026年)
※ 数値は調査対象・期間・クエリ種別により異なります。本記事では、AI検索時代のKPI設計を考えるための代表的な公開調査・提言を参照し、査読前の研究は「参考となる見方」として区別して紹介しています。最新の一次情報をあわせてご確認ください。
