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NORTH HILL AI・LLMO Weekly Report

Vol.9|今週のAI・LLMOトレンド

Vol.9 2026年5月8日

今週は、AIが「ツール」から「取引相手」に変わった一週間でした。5月4日、AI業界の二強であるAnthropic(Claudeの開発元)とOpenAI(ChatGPTの開発元)が、わずか数時間差でウォール街の大手投資ファンドと組んだ新会社の設立を発表。両社が選んだのは、ファンドが保有する「数千社の中堅大企業」へAI企業のエンジニアを送り込み、業務に直接組み込むやり方です。何が変わるのか——これまで「どのAIを使うか」は社内のIT部門や経営層が決めていましたが、今後は自社のオーナー(投資ファンド)や取引先が選んだAIを、半ば前提として導入する流れが強まります。 広報・マーケティング部門にとってのインパクトは、(1)取引先・顧客企業が使うAIが変わると「自社情報がAIに正しく読まれているか」がBtoB営業の入り口に直結すること、(2)動画・画像・文章の制作費が下がり続けるなか、「AIに引用される一次情報」を持つ企業が選ばれる構造が固まったこと。管理部門・経営層にとっては、(3)契約・調達・予算配分の前提が、AI導入を織り込んで今四半期で見直しが必要になったことです。 同じ週、AnthropicはClaudeを「広告フリーで使い続ける」姿勢を改めて表明、5月1日には米国防総省が大手8社と機密ネットワークでのAI利用契約を締結(Anthropicは安全保障上の留保で除外)——AIベンダーの「思想と立ち位置の違い」が、企業のブランド選定にまで影響する局面に入りました。連休明けの最初の週、「自社サイト」「自社のコンテンツ」「自社の発注先」をAI時代向けにどう手当てするか——その判断材料を、広報・マーケ・管理・経営の4つの視点から整理しました。

Topic 01

AI業界の二強がウォール街と組んだ「常駐型AI導入」の新会社を設立——BtoB営業・広報の前提が変わる

何が起きたか

5月4日、ChatGPTのOpenAIと、ClaudeのAnthropicが、それぞれ別の大手投資ファンド連合と組んで、企業向けAI導入の新会社を発表しました。両社のモデルはほぼ同じ——投資ファンドが保有する中堅〜大企業(合計で数千社規模)に、AI会社のエンジニアを常駐させて業務に組み込むというもの。「AIを売る」のではなく「AIで業務を作り変える」までを請け負う、コンサルティング会社に近い形です。

もう少し詳しく

OpenAIが設立したのは「The Deployment Company」(評価額100億ドル)で、TPG・Brookfield・Bain Capital等19社の投資家と組み、ターゲットは投資ファンドが保有する2,000社超の中堅大企業。Anthropic側はBlackstone・Hellman & Friedman・Goldman Sachsをパートナーに評価額15億ドルでスタート。両社とも、自社のエンジニアを顧客企業に常駐させ、現場のワークフローに合わせてClaude/ChatGPTを実装する——これまでPalantir(米データ分析企業)が大型契約で磨いてきた手法を、AI業界が一気に大規模化させた格好です。

広報・マーケティング部門への影響
  • 取引先や顧客企業の「回答する側」がAIに変わります。BtoBの問い合わせ対応・見積もり確認・比較検討が、社内担当者ではなく社内に常駐するAIエンジニアと連携した社内AIエージェント経由で行われるケースが、向こう12か月で急増します。これは自社のWebサイト・製品ページ・FAQ・価格表が「人だけでなくAIが読みに来る」前提で書かれているか、という問題に直結します。商品の仕様・価格・在庫・サポート条件が機械可読な形(後述のJSON-LD)で整備されていない企業は、相手側AIエージェントの候補リストから静かに外れていきます。
  • AIに引用されるケーススタディ」をプレスリリースとは別建てで持つ企業が、競合より一歩先に出ます。投資ファンドのポートフォリオ内で「同業のA社がAIで●●%効率化した」という導入事例が共有されると、ファンド内の他社にも横展開される——その横展開フェーズで「同業の事例」を日付・業界・成果数値・担当者コメント付きで自社サイトに公開している企業が、AIから優先的に引用・推薦されます。広報部門の発表業務に「AI読解用ケーススタディの整備」を追加する時期です。
管理部門への影響
  • 取引先のAI導入が、自社の契約・運用にどう影響するかを点検する必要が出ました。具体的には、(1)顧客先のAIエージェントに自社情報を提供する際の機密保持・データ取扱の追加条項、(2)AI経由で受発注・見積もりが行われた場合の意思決定責任の所在、(3)取引先のAIが学習データとして自社情報を使う場合の利用範囲の明示——この3点を契約書テンプレートに追加する起案を、法務・購買と組んで来月までに着手するのが現実的です。
  • ベンダーロックインのリスクが高まる局面です。ファンド経由でClaude・ChatGPTいずれかが事実上の標準として入ってくると、後から切り替えるコストが跳ね上がります。社内の主要なAI利用(議事録・翻訳・資料作成・カスタマーサポート)について、「契約終了時にプロンプト・設定・蓄積データを返してもらえるか」を契約レベルで明文化しておくこと。今四半期の調達ポリシー見直しで必ず入れるべき項目です。
経営層への影響
  • 自社の親会社・株主・主要投資家が、AnthropicとOpenAIのどちらのJVに紐づいているか(あるいは中立か)を把握してください。これは「AI戦略」の話ではなく、経営の独立性の話です。投資家の選好AIが採用候補リストに事実上の優先権を持ち始めると、社内の意思決定が形骸化します。M&A・カーブアウト・ファンド出資のDDチェックリストに「AIベンダー選定の独立性」を加える運用を、CFO・経営企画起点で導入することを推奨します。
  • 自社が「AIで業務を作り変える側」になるか、「作り変えられる側」になるかは、向こう6〜12か月の経営判断で決まります。社内の重要業務(営業・マーケ・カスタマーサポート・経理・人事)のうち、どこに最初にAI常駐型の支援を入れるか——「AIに丸投げ」ではなく、自社の暗黙知をAIに移植する設計を主導できる社内のキーパーソンを今月中に指名する必要があります。

Topic 02

Anthropicが「Claudeに広告は載せない」と再宣言——AIベンダーの「思想」が企業ブランドの選定軸になる

何が起きたか

5月初旬、AnthropicはClaudeに広告を載せない方針をあらためて打ち出しました。背景には、競合のOpenAIがChatGPTの無料プラン・廉価プランで広告テストを開始することを2026年初頭に発表したことがあります。AIラボごとに「収益化の哲学」がはっきり分かれ、どのAIを使うかが企業の倫理姿勢を反映する段階に入りました。

もう少し詳しく

Anthropicは「Claudeはユーザーが深く考えるための場所」として、ユーザーの会話内にスポンサードリンク・広告表示・広告主の意向を反映した回答を入れない方針を堅持。代わりに、有料プラン(個人・チーム・エンタープライズ)と企業向け契約から収益を上げる、と説明しています。一方OpenAIは段階的な広告導入を進めており、ChatGPTの自然な回答の前後に「明示的にラベル付けされた」広告を表示するテストが米国の無料・廉価プランで始まっています。

両社の選択の差は単なるビジネスモデルではなく、「AIに何を質問しても、回答が広告主の都合で歪まない」という信頼を取るか、「無料利用層を広告で支えてユーザーベースを拡大する」を取るかの分岐です。広告業界・マーケティング業界にとっては、この分岐が直接的な投資対象の問題になります。

広報・マーケティング部門への影響
  • 自社が業務利用するAIが「広告で歪まない側」か「広告で拡大する側」かは、リサーチ・競合調査・コンテンツ企画の信頼性に直接影響します。市場調査・ベンチマーク取得・競合価格比較などをAIに頼む業務では、Claudeのような広告フリーのAIをBtoB調査の主軸にし、ChatGPTのような広告搭載が始まるAIを補助に置く運用が、調査結果のバイアス管理として現実的になります。社内のAI使い分けポリシーに、この観点を明記してください。
  • 広告がAIに入ってくる時代の「ブランド露出戦略」を、再設計する時期です。ChatGPTに広告枠が増えれば、Google検索広告と並ぶ新しい運用型広告の出稿先が生まれます。AI内広告の出稿テストに早期参入するか、待つかの経営判断は、自社の業界でAI Overviews(後述)の影響度がどの段階かで判断するのが妥当です。BtoCで競合が多い業界は5〜7月に試験出稿、BtoBや指名検索が強い業界は様子見、が現時点の安全策です。
管理部門への影響
  • 全社で導入するAIの選定基準に「広告搭載の有無」「データの第三者提供有無」「学習への利用可否」の3項目を追加する起案が現実的です。情シス・法務・購買が共同で四半期レビューする運用を作ると、「思想の違うAIを思想の違う部門がバラバラに契約している」状態を防げます。AnthropicとOpenAIの両方を契約していること自体は問題ない——ただし、用途別の使い分けルールを明文化することが重要です。
経営層への影響
  • 顧客企業や取引先からの「御社はどのAIを使っていますか?」という質問が、広告フリーAIへの選好を含めて聞かれる場面が増えます。これはサプライチェーンセキュリティの一環として、安全保障輸出管理・情報管理の質問とセットで来る傾向があります。経営層は「うちはClaudeとChatGPTを用途別に使い分けています」と説明できる準備を、今四半期で整えてください。広報部門と連携した「自社のAI利用ポリシー」の対外公開は、2026年後半のBtoB営業の標準装備になります。

Topic 03

米国防総省がAI大手8社と契約・Anthropicは除外——AIベンダー選定が「経営の地政学リスク」に

何が起きたか

5月1日、米国防総省(DoD)は機密ネットワークでのAI利用について、SpaceX(イーロン・マスク氏のxAI/Grokを含む)・OpenAI・Google・Microsoft・NVIDIA・AWS・Oracle・Reflectionの8社と契約を結びました。一方、ClaudeのAnthropicは契約から外されています——同社が「自律兵器」「大規模監視」での利用を含む条件に同意しなかったためです。CNNはホワイトハウスがAnthropicとの再協議を再開したと報じています。

もう少し詳しく

Anthropicは2026年に発表した最新のサイバーセキュリティ機能「Mythos」(前号Vol.8で詳説、17年放置されていた重大な脆弱性をAIが自律発見した事例)で、防御側AIとしての価値を示しました。これがホワイトハウスとの再協議のきっかけです。一方で、ChatGPTのOpenAIは政府調達の窓口を厚く持ち、SpaceX/xAIは新規参入で一気に主要供給者の地位を確保——AI業界の「政府調達の地図」が、5月1日に大きく書き換わりました。日本企業にとってこの動きは、米国子会社・米国取引先・米国政府機関と関わる事業のベンダー選定リスクに直結します。

広報・マーケティング部門への影響
  • 取引先・顧客企業から「御社のAI利用は安全保障規制と整合していますか」という質問が、特に米国子会社や米国輸出を持つ企業との取引で増える時期です。広報部門は経営企画・法務と連携して、(1)社内で利用しているAIベンダー一覧、(2)各ベンダーの安全保障対応の姿勢、(3)有事の代替プラン——をファクトブック形式で社内に共有しておくと、対外問い合わせへの一次回答が早まります。
管理部門への影響
  • 自社のAI利用が、米国の輸出管理規則(EAR)・経済安全保障推進法・GDPRに整合しているかを点検する四半期レビューを始めるべきタイミングです。特に、(1)海外子会社・海外駐在員がAIを業務利用する際のデータの送信先国、(2)顧客データをAIに入れた場合の越境移転、(3)AI出力物の輸出該当性——の3点は、リスク管理部門が早急に整理する論点です。
  • ミッションクリティカル業務は複数AIベンダー併用、業務効率化は単一でも可」という社内ルールを来月までに明文化してください。突発的な政策変更(米国による特定ベンダーの輸出規制、特定国のサービス停止等)が起きても、業務が止まらない設計を作るのが管理部門の役割です。
経営層への影響
  • 日本国内でも、5月以降に経済安全保障推進法の追加指定や、防衛省・警察庁・金融庁のAI利用ガイドラインが動く可能性が高い局面です。前号Vol.8で取り上げた4月20日の自民党合同会議の緊急提言と連動します。経営層は、レギュラトリ動向のスクリーニングを担当する人を経営企画内に配置するか、外部アドバイザーと月次で確認する運用を始めてください。「AIベンダー選定」が、地政学リスク・サプライチェーンリスクの一部として経営アジェンダに上がってきた——これが今週の最大の構造変化です。

LLMO Trend

「AI内ブランド露出」の指標が二つに分かれた——言及されているのに引用されない、引用されているのに言及されない

LLMOとは(毎号掲載)

LLMO(LLM最適化)は、GoogleでのSEOのAI版です。ChatGPT・Claude・Gemini・PerplexityなどのAIに「●●業界のおすすめは?」「××を比較して」と聞かれたとき、AIが回答の根拠として引用・言及するコンテンツに、自社情報が選ばれやすくする取り組みを指します。

今週のLLMO的変化

最近の調査(Growth Memo・SparkToro・Stackmatix等の2026年4月データ)で、AI別のブランド露出パターンに明確な違いがあることが分かってきました。具体的には:

  • Gemini(Google):回答テキスト中でブランド名を言及する率は83.7%と非常に高いものの、自社サイトへのリンク(出典引用)は21.4%しか付かない。会話相手のように知識を披露するスタイル。
  • ChatGPT(OpenAI):逆に出典引用率は87.0%と高いが、ブランド名の言及は20.7%しかない。学術論文の脚注のような構造で、「Wikipediaから」「Reutersから」のように媒体名は出すが商品ブランド名は出にくい。
  • AI Mode/AI Overviews(Google):両者の中間で、AI Overviewsは言及率61%・引用率84.9%、AI Modeは言及率37.6%・引用率76.3%。

つまり、自社のブランドが「AIに言及されているのに、自社サイトに送客されない」ケースと、「自社サイトが引用元に出るのに、ブランド名が答えに出ない」ケースが、別々のAIで発生しているということです。

広報・マーケティング部門への影響
  • 「自社の名前がAIで何回出たか」(Brand Mention Rate)と「自社サイトが出典として引用された回数」(Citation Rate)は、別々の指標として別々のAIで管理する必要がある——これが2026年型のLLMOの基本です。社内のレポートで両者を一括りにしている場合、施策の打ち分けができなくなります。
  • 自社業界の主要クエリ(「●●業界 おすすめ」「××サービス 比較」「△△ 導入事例」など)20〜30本を選び、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityの4つで定点観測する運用を始めてください。ただし、ChatGPTやGeminiはユーザーごとの履歴・メモリで回答を個人化するため、担当者個人のアカウントで投げると「自社のことを以前話したから出てくる」のか「LLMO施策の効果で出てくる」のか区別がつかなくなります。観測専用アカウント(メモリオフ・ログアウト状態の併用)を別途用意し、1質問につき新規セッションで3回投げて多数決を取る——という最低限の作法が必要です(具体的な運用方法は後述)。手動運用でも3か月続ければ自社業界での競合の出現構造の変化が見えてきます。Web解析ツールがまだ十分カバーできていない領域なので、早期着手が競合優位になります。
経営層への影響
  • 流入数(PV・セッション)だけでブランド健全性を判断する時代は終わりました。「AIに引用される回数」「AIにブランド名が言及される回数」「AI経由で来た来訪者の購買意図の高さ」——この3つを四半期レビューに加えてください。広告予算・コンテンツ予算・採用予算の配分判断が変わります。
今日からできる具体的なアクション3点
  • 手動の「AI引用観察シート」を5月中に始める(パーソナライゼーション補正版):自社業界の主要質問20本を、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityに投げて週次で記録します。ただし、ChatGPTやGeminiにはメモリ機能による個人化があり、担当者個人のアカウントで投げると過去の会話履歴が回答に影響します。観測用には、(1)メモリ機能をオフにした観測専用アカウントを1つ用意する、(2)1質問につき新規セッションで3回投げて多数決を取る(AIの回答は同じ質問でも揺れるため)、(3)担当者の業務アカウント(個人化あり)の結果と並べて差分も記録する——の3点を必ず守ってください。スプレッドシートで運用可能で、広報部門の若手1名が週2〜3時間で回せます。3か月後に得られるのは「絶対値の変化」ではなく「自社業界での競合の出現構造の変化」で、これがコンテンツ施策の優先度を決める判断材料になります。本格的な定量計測に進む段階で、Citelligence・Spotlight・Otterly等の専門ツール(月額数百〜数千ドル)への移行を検討してください。
  • 「AI読解用のケーススタディ・ライブラリ」を整備する:自社の導入事例を、業界・導入時期・使用したAI・改善した数値・担当者の一言コメント——の5要素を必ず含む形式で公開。プレスリリースとは別の専用ページとし、JSON-LD(後述)形式の構造化データを入れる。AIに「●●業界の事例は?」と聞かれた時の引用候補に入る入り口になります。
  • 主要商品ページのFAQを「機械可読」にする:商品ページのよくある質問を、JSON-LDのFAQPage形式で記述する。これは制作会社・Web開発会社に依頼すれば1ページあたり数時間で対応可能で、追加コストは大きくありません。AI Overviews・ChatGPT・Perplexity経由の引用率がはっきり上がる、最もコスパの良いLLMO施策です。

① セキュリティ事故のブランド毀損リスク

Vol.8で取り上げたバイブコーディング・プラットフォーム「Lovable」のセキュリティ事故は、5月以降も米欧のセキュリティメディアで継続的に言及され、「AI時代のセキュリティ事故は、AI上のブランド評判にも長期的に影響する」事例として定着しつつあります。広報部門は、自社で新しくAIツールを導入する際のセキュリティ監査の証跡を社内に残す運用を、5月のうちに始めることを推奨します。万一の事故時に「我々はこのチェックを通過させていた」と説明できる準備が、ブランド毀損の最小化につながります。

② 自民党のサイバー対策提言と政府の動き

4月20日の自民党合同会議の緊急提言を受けた具体的政策パッケージは、GW明けの5月第2〜3週にかけて、経産省・金融庁・NISCの追加ガイドラインや補助金として動く可能性が高いタイミングです。広報・経営企画は、5月10日週からNISC・経産省ニュースルームを日次でチェックする運用を始めてください。

③ バイブコーディング規制の議論

「非エンジニアが業務アプリをAIに作らせる」流れへの規制議論が、EU・米国の両方で動いています。社内で部門ごとに勝手なAIツールでアプリを作っている場合、5〜6月のうちに「承認済みAIツールリスト」「本番投入前のレビュー手順」を情シス起点で整備しておくと、規制対応コストを抑えられます。

来週の注目ポイント

  • ① 日本のPE保有先からのAI導入アナウンス:5月4日のJV発表を受けて、日本市場で活発な投資ファンド(ブラックストーン日本・KKR Japan・カーライル等)の保有先で、Claude/ChatGPT導入のプレスリリースが連続する可能性があります。自社の取引先・買収候補先・ファンド出資先の動きを来週から週次でモニタリングしておくと、競合調査の材料になります。
  • ② Anthropic-Pentagon再協議の決着:CNN報道の通りホワイトハウスは協議再開モード。5〜6月中に何らかの決着(条件付き再採用 or 引き続き除外)が見える可能性が高い局面です。安全保障文脈でのAIベンダー選定に影響するため、防衛・公安・重要インフラ関連の取引を持つ企業は注視を。
  • ③ Google・Metaの対抗JV発表可能性:MicrosoftはOpenAIへの戦略投資という形で陣営を確保していますが、GoogleとMetaは独自のエンタープライズAI流通網を持ちながら、5月4日のJVモデルへの直接対抗策は未発表です。Googleのサービス(Gemini・Workspace)を基幹利用している企業は、契約更新タイミングを来期にずらして様子を見る選択肢も検討の余地があります。

用語解説

JSON-LD(ジェイソン・エルディー)
Webページの中に、検索エンジンやAIが「機械として読める情報」を埋め込む標準フォーマット。たとえば商品ページのJSON-LDには、商品名・価格・在庫・評価・FAQ等を構造化して入れます。人間が読む見た目には影響せず、AIや検索エンジンだけが追加で読みに来る情報。AI Overviews・ChatGPT・Perplexity等への引用率を高める基本施策で、Web制作会社・Web開発会社に依頼可能。1ページあたり数千円〜数万円で対応できる範囲。
フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)
顧客企業のオフィスやチームに常駐し、業務の現場を見ながらシステムをカスタム実装するエンジニア職。米Palantir社が大規模化したやり方。AnthropicとOpenAIが2026年5月のJVで採用。一般的なソフトウェア販売(ライセンスとマニュアル提供で終わる)と違い、業務改革まで請け負うため、契約金額・継続率が桁違いに高い。
The Deployment Company(ディプロイメント・カンパニー)
OpenAIが2026年5月4日に最終クローズした、企業向けAI導入の合弁会社。評価額100億ドル。投資ファンドが保有する2,000社超の中堅大企業がターゲット。OpenAIはこの会社の支配権を保持しつつ、投資家側に年17.5%×5年のリターンを保証する異例の財務構造で組成。
Brand Mention Rate(ブランド・メンション率)/Citation Rate(出典引用率)
LLMOの2大計測指標。Brand Mention Rate=AIの回答テキスト中に自社名・自社製品名が登場した率。Citation Rate=AIの回答に自社サイトへのリンクが出典として含まれた率。両者は連動せず、AIごとに傾向が違う(Geminiは言及多め・引用少なめ、ChatGPTは引用多め・言及少なめ等)。それぞれ別の施策で改善する必要があるため、別管理が必須。
AI Overviews(エーアイ・オーバービュー)
Google検索結果の最上部にAIが要約を表示する機能。複数のWebページから情報を集めて答えを生成し、出典リンクを付ける。ユーザーが検索結果ページで答えを得て満足し、個別サイトに来訪しない「ゼロクリック検索」を加速させる主因。日本でも2024年以降、徐々に表示範囲が広がっている。
MCP(Model Context Protocol/モデル・コンテキスト・プロトコル)
2024年にAnthropicが提唱した、AIと外部の情報源やツールを接続する共通規格。Web開発の世界での「USB端子」に相当する標準で、自社のFAQ・在庫・予約システム等にMCP対応のエンドポイントを用意すると、ChatGPTやClaudeのAIエージェントから直接照会される入り口になる。2026年後半から、Web開発会社の標準提案メニューに入る見込み。
メモリ機能(AIのパーソナライゼーション)
ChatGPT・Gemini・Claude等が、ユーザーの過去の会話や保存メモリを参照して回答を個人化する機能。ChatGPTは2025年に有料・無料両方で本格展開、Geminiも同様にGoogleアカウント全体の文脈を引きます。便利な反面、LLMO観測の障害になる側面があり、担当者個人のアカウントで「自社業界のおすすめは?」と投げても、過去の会話で自社の話題が出ていれば、それが理由で自社が言及される可能性があります。LLMO観測用には、設定でメモリ機能をオフにした観測専用アカウントを別建てするか、ログアウト状態のシークレットウィンドウから投げる作法が必要です。
この記事の著者 今津 学 株式会社ノース・ヒル AIディレクター
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